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教育現場におけるアサーション DESC実践編Vol.1

DESC実践編 vol.1
NSGK STYLE
黒木 幸敏(くろき・ゆきとし)
  • 兵庫県生まれ。
    関西学院大学 法学部卒業
    兵庫教育大学大学院学校教育研究科学校教育専攻 生徒指導コース修了

    現在、神戸大学附属中等教育学校 教諭
    臨床心理士。学校心理士。

『最近はDESC法を使って社会科の授業をしているんですよ』

日精研の認定トレーナーの黒木幸敏先生からメールをいただいたことがきっかけでした。
黒木先生は神戸大学附属中等教育学校の先生です。
「社会科で?どういう風に授業されているんだろう??」と強く興味を持った私はインタビューをさせていただきました。
今回ぜひ掲載したいと思った理由は次の2点です。

  • 教育現場でのアサーションの実践例を広くみなさんに知って欲しいから
  • その授業がとてもユニークだったから
この記事を読んで『アサーションってこんな風に授業に使えるんだ』と一人でも多くの先生が興味を持っていただけたら嬉しく思います。

それでは早速インタビューへと進んでいきましょう。
なお、DESC法の話がありますので、ご存知ない方は巻末の付録「DESCとは??」をご覧ください。
教室

アサーションの文化的な違い

――以前に先生とメールでご連絡させていただいている時に、「歴史上の人物に対してDESCを使って主張しよう」という授業をされていると聞いて、すごい興味を持ったんですよ。とても面白いな~と思って。しかも主張したい歴史上の人物の一番人気は井伊直弼であるとお聞きして(笑)。そこで今回インタビューさせていただくことになったわけですが。

黒木先生(以下黒木):そうなんですね。明治くらいまでしか授業でやってなかったっていうのもあると思うんですけど、その時点までで誰でもいいから日本でも、世界でも歴史上の有名な人物にDESCで作る課題を出したんですね。そしたら井伊直弼が114名中24名。

―――多いですね(笑)。5人に一人くらいの割合ですか。

黒木:やっぱり開国を独断専行したことに対して思うことがあったんじゃないでしょうか。
ステップの順番でいうと、例えばDが「井伊直弼さん、あなたは周りに相談せずに開国しましたね」という子がいましたね。

―――それがDになるんですね。Eはちなみに。

黒木:Eはね、「私は~」で始まるものが大体多いんですが、
「もう少し日本国内の色んな人の意見をきいてから決めるのがよかったんじゃないでしょうか」というふうなことを言ってますね。
そしてSはシンプルに
「もっと周りの意見を聴くようにしてくださいませんか」みたいな。
それでYesの場合のCは
「ありがとうございます。これで日本もわりと平和になっていくんじゃないでしょうか」と(笑)。

写真

中学生が物申したい歴史上の人物No.1!! 井伊直弼。
(画像はWikipediaより引用)

―――歴史上の人物にありがとうございますって言うのを想像すると面白いですね(笑)。

黒木:Noの場合のCを提案している子もいますね。
「そうしたらせめてもう少し朝廷の意見を取り上げるとかしていただけませんか」いうてね。
提案してる子もおるし、もう一回Eで気持ちを述べて、
「私は直弼さんがとても力のある政治家だと思うんですが、それについては残念です」ということを書いてる子もいました。

―――少し共感的なものも入れつつ。

黒木:うん、そういう子もけっこういますよ。あとこんなんもあります(先生が持ってきてくれたノートPCでDESCのデータを見せてくれる)。

―――けっこう具体的ですね。Dで「橋本左内や吉田松陰を殺害しましたね」とか。

黒木:誰やったかちょっと忘れたんですけど、井伊直弼の代表例みたいなのがありましたね。それを下にやってもらったら(画面の下の方にクリックすると)色んなDESCがありますよ。

―――いっぱいありますね。伊達政宗もあるんですね。

黒木:伊達政宗は、それユニークなやつかな。

―――分国法で妻が不倫した場合、妻とその相手を殺すと決めていますね(D)。

黒木:そうらしいんですよ。

―――こういう法律を作ったんですね。

黒木:伊達政宗が自分の領土の中での法律、分国法っていうのがあるんですが、確か塵芥集(じんかいしゅう)かな。
その中に書いてあるそうなんです。

―――へぇ~。でこれを発見してDESCに使おうと。

黒木:ええ。最近、レキジョが増えました。

―――レキジョ?

黒木:歴史好きな女の人を『レキジョ』って言うらしいんですけど。カタカナでレキジョと書いて(笑)。

―――あの鉄道の好きな男の子を『テツオくん』というみたいに。

黒木:そうそうそう。

―――レキジョっていうのがあるんですか。

黒木:若い女性に割りとね、伊達政宗、直江兼続とか。そういう人がね、一部の歴史好きな女の子とか、若い人に人気あるんですって。
まぁアニメと通ずるものがあるみたいですけどね。そういう子がけっこう詳しいですね。

―――少し話は変わりますが、伊達政宗も、井伊直弼もなんていうんですかね、悪者みたいなイメージがあるんですが、逆に良いイメージの人ってないんですか。

黒木:なるほど。割とたしかにね、ちょっと批判的なものが多いのはたしかですね。

―――その方がやりやすいんですかね。

黒木:書きやすいみたいですね。良いやつはね、坂本龍馬とかね、土方歳三とか、早く亡くなりましたが、「とても残念です」って書いてる子がいますね。坂本龍馬に対してだったら「あなたは暗殺されましたね」というのが事実のD、Eでは「私はとても残念です。
なぜならあなたは日本にとってとても重要な人物だったので、暗殺されたことがとても残念です」と。だから提案のSとして「もう少し慎重に行動していただけませんか」っていうね(笑)。そういうことを主張している子もいますね。

―――いや、面白い(笑)。

黒木:とかね、早く亡くなったことが残念だったっていうのがありますけどね。やっぱりたしかにわりと批判的なものが多いかな。
野口英世もたしか「残念です」っていう気持ちがあって、「もう少しあなた自身の健康に気をつけてやってくれませんか」っていう提案がありますね(笑)。

―――面白いですね~(笑)。亡くなっている人に提案するんですもんね。

黒木:福沢諭吉もそうですね。「あなたが日本に取り入れた自由や平等によって勇気づけられたと思います」っていうEの後に、「もっと広めていただけませんか」という提案のSがきます。
それと「その考えを日本に入れていただいたので、もっとそれを広めていただけませんか」という提案も書いてありますね。あとはね、わりと戦国大名、上杉謙信、浅井長政らへんは批判じゃなくて、良いようなのを書いてたと思うんです。

―――もしかして、あなたに天下をとって欲しかったみたいな感じですかね。

黒木:そうそう。そういうのもありましたし、例えば上杉謙信はね、「もう少し長生きして欲しかったです」みたいなことが書いてありました。
けっこう色んな人物でますけどね、僕は内容がユニークだということと、DESCの形を重視してましたね。この頃は形をメインにしてたので、D,E,S,Cにスッキリなっているものを、ここに(PCに)選んで保存してるんです。

《編集後記》

Vol.1はここまでです。いかがでしたでしょうか。
歴史上の人物にDESCで提案するって新鮮で面白いですよね。
個人的には井伊直弼への「ありがとうございます。これで日本もわりと平和になっていくんじゃないでしょうか」というCが大好きです。
次回は社会科でDESC法を使うことになったきっかけの話です。
教育現場でのアサーションの実践例に関心を持たれている先生方も多くいらっしゃることと思いますので、Vol.2を楽しみにしていてください。

森崎 智