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教育現場におけるアサーション DESC実践編Vol.3

DESC実践編 vol.3
PROFILE
黒木 幸敏(くろき・ゆきとし)
  • 兵庫県生まれ。
    関西学院大学 法学部卒業
    兵庫教育大学大学院学校教育研究科学校教育専攻 生徒指導コース修了

    現在、神戸大学附属中等教育学校 教諭
    臨床心理士。学校心理士。


いよいよインタビューの第三弾でこれが最後です。
DESCを取り入れて変化はあったか、また今後の展望についてお話いただいています。
教室

なにか変化はありましたか??

――それで実際にDESCを集中的に取り組まれて、目に見えて変わったな~ということはありましたか。

黒木先生(以下黒木): そうですね、やっぱりみんながアサーティブな話し方っていうのを、まず頭でわかってることがけっこう大きいかなと。まぁいつも日常会話をDESCでしゃべって、というようなそんな窮屈なことはしてないですが、問題解決場面のときは「やっぱり先生、DESC使ってみて良かった」っていう声がありますよ。友達と仲たがいした時に紙にDESCを作って書いてから友達と話をしたら分かり合えた、とか、上手いこといったという報告も時々受けますね。やっぱり友達とのトラブルが多いですね。
あとはお母さんとの関係ですかね。女の子なんですけど、それはDESCだけではないですが、アサーションをやった時に怒りを伝えている時の裏の気持ちというのを心理教育でやったんです。怒りの裏には「悲しい」とか「わかってほしい」とか、そういう気持ちがあるのを伝えたら、ある子が「お母さんが私のことですごい口やかましい。色んなことに干渉してくる。すぐに怒るけども、でもよく考えてみたらお母さんは心配していたんだと。私のことがすごく心配なんだろうなっていうことがわかった」って言ってくれました。それをDESCで伝えたらいいのではないかと思いましたけどね。

―――すごいですね。

黒木:3年生くらいならそういう子もいますね。たしか門限だったかな。お母さんに対して、 門限をいつも7時にしていますね。私にとってはそれがとても窮屈だと。だからもう少し延ばしてもらえませんか、というのを交えながらお母さんに言ったそうです。お母さんが心配しているのもわかるけど、いうのも伝えたらしい。そんなこともありましたね。

―――その気づきはすごいですね。

黒木:すごい子だなと思いますね。その子母子家庭なんですよ。だから3年生くらいだったら本当に深い、想像を超えるものが出ますね。特に女の子が深い気づきがある子がいますね。やっぱり本当の自分の気持ちはこうやったんやなとか、あるいは自分の自己表現パターンがね、3つの自己表現やっててもね、「私はアサーティブだと思っていたんだけど、ゆずることが、控えめなのがアサーションだと思ってたけども、自分が実は受身的だったんだと。だから時々ストレスが溜まるんだと気づいた」って書いてた子がいましたね。

―――いや~驚きです。

黒木:1年生でもそういう子いますよ。

―――感受性が豊かですね。洞察する力があるというか。

黒木:そうですね、そういう子もいますね。日頃悩んでいることも多いんかなと思ったりもしますけどね。まぁそのへんがいいところかな。
あとは心理教育にネガティブな子もいますからね。118人おったら1人か2人はいますからね。だからといってその子に強制的にアサーションを押し付けるということはしないようにしています。ただ社会科では授業の一環として、これはこんなんやって覚えてもらうってことは言ってますけどね。でも知ったからと言って使う、使わないはあなたの自由っていうのもありますからね。そういうことも言いながら、とりあえずまず知ってもらわんと、良い、悪いもわからないしともいえますね。ネガティブな子って、僕らから見たらやっぱり見たくない感じがけっこうあるかな。孤立してる現実とかね。あるいはすごく、攻撃的でしんどいちゃうかなとかね。そういう子もまぁまぁいますけどね。
でも概ね続けてきて良かったっていうのはありますね。で割と、時々ね、1年生、2年生くらいだったら、「それ攻撃的やな」とかね、みんなが自己表現に気を使うようになるということは、まぁ悪いことではないと思うんですね。「アサーティブじゃないな」とか、「今のはアサーティブや」とか、休み時間に言ってたりね(笑)やっぱり3つの自己表現のところの共通理解は攻撃的や受身的は相手に伝わりにくいという共通理解はできてるんだね。それよりもアサーティブな方が伝わりやすいなってことは。じゃあアサーティブな表現っていうのは何かっていうと、DESCをやると理解しやすいかなと思いますね。

―――やっぱり生徒も自分の身に置き換えて「攻撃的は良くない」とか、「受身的はどうも良くないようだ」っていうのがわかってくるんですね。

黒木:ええ、この前もしたんですけども、実際にロールプレイ見てもらうんですよ。電車とかで割り込まれても、何も言わず黙っている人がAさん(ノンアサーティブ)、あるいは割り込まれたらキレル人がBさん(攻撃的)。両方とも僕がやるんですけどね。

―――それ先生がやられるんですか(笑)。

黒木:そうです(笑)。それと割とおだやかに「私のほうが先に並んでたから後ろに並んでくれないかな」と言う人がCさん(アサーティブ)だとすると、『言われてどれが一番良い?』と相手役の生徒にまず聞くんですよ。
そしたらAさんに対しては「良い」と言う子もいますね。何も言われてないから。「でもなんかわからへん」とかね、「言うてないから、わからない人やね」とか言う子もいるし、Bさんには「むかつく」とか「腹立つ」とかね、「怖い」というのもありましたね。それで『Cさんどうやった?』と聞くと、「ちょっとイヤミたらしいけど、3つの中やったらいいかな」、「言うこと聞こうかなと思う」とかね、「Cさんに言われたら、ほんまやなとすぐ後ろに並ぶ」と言う子もいるし。
それで後でみんなに聞くんですね。『3択でどれかに必ず手を挙げてや』と言うと、Bさん、攻撃的に手を挙げる子もいますけど、一番多いのはCです。それで攻撃的を選んだ子には、『そんなら自分が言われたらどうする?』って実際相手役をその子がやったら、「やっぱむかつくな」って言ってましたね(笑)。
ちょっと誘導的やけど、『Cの方が素直に従いやすいやろ』っていうことで共通理解はしやすいですね。Aだとわかってもらえない、無視される。Aやったら割り込んだ人も気づいてない可能性もありますよね。どこから列かわからない時もあるから、悪気なく入ったかもしれないし、Aさんは割り込まれたことで、一日嫌な気分で過ごすかもしれないけど、割り込んだ人はそんなことに気づかない場合もあると後で説明したりするんですけど。そういうのをやってからDESCをやって、認知はその後でやったりしますね。生徒にとってつながりやすいかなって思ってね、3つの自己表現やってから、じゃあアサーティブな表現勉強してみようかって言って。

―――すぐ実践の方がわかりやすいですよね。

黒木:いまのところはそうしてるんですけどね。その後、「考え方も影響してるんやで」って言ってね。そんな感じで、1年生の間にそういう流れでやるんです。

―――面白いですね、先生がロールプレイをやって見せて。

黒木:感想にロールプレイのこと書いてる子もいました。「先生のロールプレイがめっちゃ面白かった」って(笑)。

―――リアルだったんですかね(笑)。

黒木:わりとそうやね。関西弁でしたからね、迫力あったんですかね。そんなに怖くはないほうですけどね。

―――優しい感じなので、見た印象は。

黒木:はい、大体そういう風に言われるんですよ。

今後の展望は??

―――色々お話をありがとうございました。最後に、これから実習みたいなものをやっていきたいというお話がありましたけど、今後の展望というか、こういう風にやっていきたいというのを教えていただけますか。

黒木:そうですね、まぁDESCのスキルは身につけてきてると思うので、DESCをどういう風に使うかということですかね。例えば今後は問題解決場面でのグループワークをやりたいなと思っています。それを全員一斉にするんじゃなくて、一つをモデルにして何人か、他の子は見ているっていう風にすると、みんなその後でね、どういうとこがポイントやったかを共通認識できるんで。

―――面白そうですね。観察してなきゃ気づけないこととかもありますもんね。

黒木:そうですね。で一つは全員したら人数多くて把握できないから、安全じゃないですよね。だから1グループだけ。見てるだけでもけっこうね、ワークシートとか書くようにしてたら、それなりに見てくれるかなぁとは思ってるんですけどね。完全に成人対象の自発性に任すというのは、なかなか難しいですよね。

―――誘導して「やってみよう!」っていう風に。

黒木:そうですね。DESCが日常生活に活かすようなヒントになったらなぁと思います。

―――いいですね。どんどんスキルを身につけたら実践に活かす問題解決をやろうっていう風に。これは身になると思います。

黒木:ありがとうございます。社会科やから特に問題解決がいいかなとは思ってるんですけど。なんかね、憲法なんかに関係ありそうな、ルールを作るとかね、あるいは、国同士のやつとかね。アメリカになってもらって、イギリスになってもらってとかね。

―――それ面白そうですね。

黒木:例えば環境問題とかだったら1テーマだけをね。このままだったら5年後に地球が滅びるとか、例えばですよ。

―――難しそうなテーマですけど、実際どうなのか興味あります。

黒木:まだアイデア段階ですから、そうしないかもわかりませんが。

―――すごく面白そうです。世界情勢だとか、今どうなっているのかっていうのがわかると思うんです。

黒木:でもその前には調べてもらわないといけないからね、そういうことも社会科の勉強になってくる。

―――かなり調べなきゃいけないでしょうね。この国はどんなことをやってきたか、とか。

黒木:そういうのをやってみたいなって思ってるんですよね。

―――私も以前から思ってましたが、外交官こそアサーションが必要なんじゃないかって思うんですよ。国同士の大統領なり、トップの人がアサーティブに話し合えれば、もう少しうまくいくんじゃないかなって思いますけどね。平木先生も本でそういうことをお書きになってましたし。

黒木:戦争の原因とかね。ほんまそう思います。それぞれの国になってもらって、色んなことを言ってもらおうかなと。まだアイデア段階で、どんなテーマにするかね、環境問題だったり、戦争とかね、いいかなと思ってるんですけどね。

―――ある国に批判的な子が、その国の役割をやったら、イメージが変わるかもしれないですね。

黒木:そうですね。いつかしたいなと思ってるんですけど。

―――もし実現したらまた教えてください。今日は興味深いお話がたくさん聞けました。どうもありがとうございました。

《編集後記》

以上でこのインタビューは終了です。
アサーションを学んだ生徒達の変化が垣間見えてとても面白かったですね。
中でもお母さんの気持ちに気づく女子生徒の話はとても驚きました。 学校現場で実践例として、私自身とても勉強になりましたが、このインタビューを読んで下さっている皆様のご参考になれば嬉しいです。

最後に黒木先生、お忙しい中だったと思いますが、長時間のインタビューに快く応じてくださり、ありがとうございました。
以前お会いした時から感じていましたが、インタビュー中でも先生の温かさや優しさを感じながら「アサーションってこういうことなんだな」とお話を聞かせていただきました。おそらく生徒達も授業の中身もそうですが、先生の温かさに触れてアサーションを学んでいるんだろうなと感じました。また色々なお話を聞かせてください。本当にどうもありがとうございました。

森崎 智